魔術師の島―T&T RPGシナリオ (現代教養文庫)

「ベア・ダンジョン」に続く、シナリオ第二弾。この当時のT&Tに言えることだが、制作サイドが自ら作り出した世界設定を、ユーザ側に「押し付け」ない姿勢がある。このシナリオにもジンド世界、ハイラックス大陸などの大枠はあるものの、一般的なファンタジー世界であるならばさほど矛盾なく適合させられるのだ。つまりは、適当に名称を代え、自分で作ったオリジナルワールドに出しても全くかまわない。裏表紙でも言及されているが、魔術師ダークスモークのダンジョン第三層や島の残りの部分を自作して自分のキャンペーン・シナリオの一部として使ってもいいのだ。さすがにシステム自体はT&Tに根ざしたものだが、こればかりは致し方ない。記載された中には、魔術師ダークスモークのダンジョンとその周辺部のフレーバー、特徴的な情報が多数記されているので、自作のガイドとしてもうってつけである。製作者、ゲームデザイナーが作り出した世界を追体験したい向きには不向きかもしれないが、非現実を創る楽しさを知る、きっかけとなれば素晴らしいことだと思う。